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海外支援報告 ~マレーシア~

海外支援報告 ~マレーシア~

荒 柾文

1支援開始に至る経過

 マレーシアの国立障害者施設の職員が福島県総合療育センターにおける技術研修のために来福したことがきっかけになり、平成元年に、その施設の上司である副所長マニアム氏に知遇を得て、現地で動作法を紹介する機会を得た。平成2年、本県の第14回キャンプの実行委員会の折に、マレーシアへ行こうではないかと軽いノリで提案したところ、これもまた研究会の仲間も軽いノリで賛同し、キャンプ後にマレーシアへ行くことになった。マニアム氏の努力もあり、マレーシア社会福祉局との共催で3日間のワークショップを開催することにこぎつけた。しかし、ワークショップ後、通訳を務めた青年海外協力隊員(PT、OT、福祉系隊員)からJICAを通して、動作法は危険であるとクレームが入り、その後、2年間は活動の進展はなかった。その後、ジョホールバルの系列施設に所長として赴任していたマニアム氏のところに、当研究会の会員(芳賀、佐藤)が再打診という密かなミッションを帯びて訪問した後に、再度、彼の努力で社会福祉局を動かし、ジョホールバルの彼の施設において、パイロット的にキャンプを実施することが決まった。

2経過

【キャンプ】
 訓練効果と資格取得を目指し、基本的に1週間の認定キャンプを基本とすることで合意。平成5年、ジョホールバルのターマン・シナル・ハラパン・ジュブリでの第1回キャンプに始まり、第3回キャンプまでは、その施設の上席職員7名のみをトレーナーとし、資格取得を目指し、福島キャンプに招聘するなど、集中的に指導を行った。この間、成瀬先生、鶴先生にも現地でご指導をいただいた。その後、他州の系列施設を会場にして、施設入所の障害者とその職員を対象にキャンプを継続することになる。平成19年第19回のマレーシアキャンプからは、福祉局の方針によりCBR(地域に根差したリハビリテーション)センターの職員と地域の障害児を対象にするとともに、マレーシア各州への展開をすることになった、保護者も一緒に参加する我が国と同じような形態となる。福祉局本庁主催のキャンプは、13州において、計37回、加えて州福祉局主催のキャンプを4回実施した。

【心理リハビリテーション研修会】
 当初はマレーシア国内に指導者が育っていなかったので、次のキャンプまでの空白を補完するため、中間に参加者のフォローアップ研修会を実施した。計6回実施。

【スーパーバイザー研修会】
 当初から、将来、自前でキャンプを運営できるようにリーダーとなるスーパーバイザーの養成を意図して支援を行ってきた。この研修は、マレーシア側からの提案もあり実施することになり、計6回実施。

【マレーシア心理リハビリテーションの会大会】
 平成20年7月、第1回大会を成瀬先生の講演を柱にして首都のホテルにて実施した。第2回大会は、平成26年3月、国立障害者職業訓練センターにて開催された。教育省、病院関係者等、他分野からの参加者も得て盛大に挙行された。この大会は、ほとんど現地スタッフにより運営された。また、平成24年3月にはクワラルンプール福祉局主催の同様の大会が高齢者センターを会場に開催された。

2008.7.20 第一回マレーシア心理リハの会1 2008.7.20 第一回マレーシア心理リハの会2

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【リーダー養成】
 マレーシアでは、福祉局傘下の施設職員11名、大学教官1名がSV資格を有しており、施設職員はCBRセンター職員の指導を行い、大学教官は、専門の心理臨床の場で活用してきた。また、その後、ボルネオ島サバ州のNGOスリムンガシセンター職員2名と同州のCBRセンターの職員1名がSVに認定された。日本各地のSVの皆さんにも現地で直接ご指導をいただいた賜物でもあり、謝意を表したい。

【まとめ】
1 海外で支援をする上で、最も重要な要素は、第一に言葉である。その意味でも九州大大学院で臨床心理を専攻した上に動作法を学んだ国立マレーシアのガン氏の専門的通訳としての貢献は多大なものがある。第二は、現地コーディネータとしてのマニアム氏の存在がある。第三はカウンターパートとのコミュニケーションである。福祉局長が交代するたびに、福祉局を訪問し事業の経過報告を行うとともに、福島キャンプへの担当幹部の招聘等を通し理解の醸成を図り、粘り強く両者間の課題解決に努めた。
2 平成26年12月に開催されたスーパーバイザー研修会を最後に、マレーシア福祉局は方針を転換し、CBRセンターでの訓練は、理学療法士の派遣によって行う決定を行った。以降、今日まで福祉局主催のキャンプ及び研修会はもとより、一部のCBRセンターを除いて動作法は行われていない。政府がカウンターパートの場合、強力な支援が得られる反面、予想していたことではあるが幹部の考え方に左右される脆弱な関係性に陥る両面があることを再認識させられた。
3 平成27年より、以前から関わりのあるMRA(マレーシア救助隊)との協働で、キャンプ、短期キャンプ、特別支援学級、盲人協会等でのワークショップを行ってきた。また、ボルネオ島サバ州のNGOスリムンガシセンターでの認定キャンプにも協力を行ってきているが、スリムンガシセンターでの支援については、他に譲りたい。